屋根・外壁塗装

瓦屋根の劣化は放置厳禁!修理で後悔しないために|劣化サインの見極め方と専門業者選びまで実例で解説。

このような方におすすめ

  • 瓦屋根の修理方法が知りたい
  • 瓦屋根の工事費用について具体的に知りたい

瓦屋根は、日本の住宅に古くから用いられてきた伝統的な屋根材です。耐久性とデザイン性の高さから現在も広く採用されています。とくに、重厚感のある外観や優れた断熱性・耐火性といった特長から、長期間にわたり住宅を守ってくれる安心感があります。

しかし、耐久性が高いがゆえに、「頻繁な点検は不要ではないか」と考える方も少なくありません。

本記事では、瓦屋根の基本構造やよくある劣化、費用相場、信頼できる専門業者の選び方などを紹介していきます。

瓦屋根の基本知識と修理の必要性

ここでは、瓦屋根の基本知識と修理の必要性をみていきましょう。

瓦屋根の主な特徴

瓦屋根は日本の建築に欠かせない屋根材であり、主な特徴は以下のとおりです。

  • 高い耐久性
  • 優れた遮熱性
  • 外観デザインの調和性

高い耐久性

瓦屋根は、多くが焼成粘土またはセメントから作られています。その特性上、強度と耐候性があり、耐久性が高く、長期間使用できます。一方で、瓦のズレや破損が発生すると、雨水の侵入を招くというデメリットがあり、雨漏り予防のため定期的な点検と部分補修が重要です。

優れた遮熱性

厚みと重さが日射を遮断し、室温上昇を抑制します。弱点としてあげられるのは、ルーフィングや野地板が長期的に湿気を帯びると劣化が進行する恐れがある点です。下地の状態確認には専門業者による点検が必要です。

外観デザインの調和性

日本建築との調和に優れており、景観の価値を高めやすい屋根材です。ただし、地震や台風によって棟や隅瓦のゆがみが発生しやすい点には注意しましょう。自然災害の後には早急な安全確認と瓦の緩みチェックが不可欠です。

瓦屋根の構造と役割

瓦屋根は、雨水の排出や断熱性能の確保、荷重分散などの多機能な役割を果たします。構造や機能の理解に基づいた適切な管理と状況に応じた点検・修繕をすることで、瓦本来の性能が長期にわたって発揮されます。
瓦屋根の構造は以下のとおりです。

構造部位 主な役割
瓦(桟瓦、棟瓦など) 雨風を直接防ぎ、外観を形作る屋根材
瓦桟(かわらざん) 瓦を引っ掛けて固定するための細木
ルーフィング(防水紙) 瓦の下で雨水の侵入を防ぐ第二の防水層
野地板 瓦の下地となる構造板。屋根全体の面を構成する
母屋・垂木 屋根の骨組みを支える構造材。荷重を分散し、全体を支える

 

瓦の種類と特徴

屋根に使用される瓦は、以下のような種類があります。

瓦の種類によって劣化の進み方や適した修理・補修方法が異なるため、自宅の瓦がどのタイプに該当するかを把握しておくことが大切です。

種類(代表例) 主な素材 耐用年数の目安
粘土瓦(和瓦・いぶし瓦・陶器瓦) 焼成粘土 約50〜100年
セメント瓦(モニエル瓦・フレンチ瓦) セメント+砂 約30〜40年
高機能瓦(ハイブリッド瓦・防汚瓦・断熱瓦) 粘土+防水加工や断熱材 約30〜60年(製品により異なる)

 

粘土瓦(和瓦・いぶし瓦・陶器瓦)

高耐久・遮熱性・重厚感が特徴の瓦です。伝統建築に多用されるケースが多くあります。外観は曲線的で重厚、銀鼠や赤褐色など伝統色が使われています。

セメント瓦(モニエル瓦・フレンチ瓦)

厚みがあり洋風デザインも可能で、表面には塗装がされています。コストが比較的安価で塗装劣化に注意が必要な瓦です。

高機能瓦(ハイブリット瓦・防汚瓦・断熱瓦)

軽量・高断熱・防汚などの機能強化型の瓦です。現代建築にも対応できます。見た目は粘土瓦に類似しており、色調や形状が幅広い点が特徴です。

瓦屋根の点検で見るべき劣化のサイン

瓦屋根の劣化は、初期段階では目立たない場合が多く、放置すると雨漏りや構造材の腐朽などの深刻な問題に発展します。

屋根は住宅において非常に重要な部分であるため、居住者、または管理者が劣化の兆候を発見し、適切な時期に専門業者へ点検・修繕を依頼することが求められます。

確認するべき主な劣化サインは以下のとおりです。

劣化サイン 状況と影響
瓦のズレ・浮き 雨水の浸入口となり、防水性能が低下するため、遠目でも瓦の並びに乱れがあれば、注意が必要
瓦の割れ・欠損 瓦が割れていたり破片が敷地内に落ちている場合、点検依頼の目安となる(屋根面の破損が疑われる)
棟瓦・のし瓦のゆがみ 屋根の最上部が波打って見える場合、棟瓦が緩んでいる可能性があるため、棟の形状を地上から確認する
苔・藻の繁殖 屋根が緑色や黒ずんで見える場合、見た目の問題だけでなく、湿気が滞留している証拠であり劣化の前兆と考えられる
漆喰の剥がれ 白い粉状のかけらが庭や雨どいに溜まっている場合、棟部の漆喰の剥がれが進行している可能性が高い
雨どいまわりの異常 雨水があふれ流れが不自然な場合、瓦の破片や劣化物が混入している可能性があり、外壁への被害にもつながる
屋根裏の湿気・雨染み 天井にシミが出ていたり、屋根裏にカビ臭がある場合は、屋根内部での漏水が進行しているリスクがある

 

瓦屋根に多い劣化の原因

瓦屋根はさまざまな外的要因や施工条件の影響を受け、年月とともに劣化や破損が進行します。ここでは、瓦屋根で多く見られる劣化と、主な原因について解説します。
劣化の兆候を早期に把握し、適切な修繕に役立てましょう。

  • 自然災害による破損
  • 経年劣化による損傷
  • 下地・防水シートの劣化
  • 異業種施工による不具合

自然災害による破損

台風や強風、地震といった自然災害によって瓦がズレたり、破損するケースがあります。とくに、棟瓦や隅瓦などの接合部は影響を受けやすく、ズレや割れの初期症状が出やすい部分です。

被災した場合は、目立った破損がなくても内部の防水層にダメージが生じている可能性があるため、すぐに点検をしましょう。ただし、屋根に直接登るのは危険なため、棒にカメラをつけて写真をとる、双眼鏡を使って確認するなどの方法にとどめてください。ドローンで屋根上から確認する場合、お住いのエリアによっては使用許可を取らなければならない場合があるため、事前に役所に確認しましょう。

<自然災害による劣化の特徴>

  • 棟瓦・隅瓦のズレや落下
  • 瓦のひび割れ、脱落
  • 防水層の損傷による雨漏りリスク

経年劣化による損傷

瓦屋根は長年、紫外線や風雨にさらされることで、表面の風化やひび割れが進行します。また、瓦を支える桟木や固定具の劣化により、瓦がズレたり、落下したりするリスクが高まります。
初期段階では見た目に現れにくく、気付かないまま劣化が進行するケースもあります。

<経年劣化による主な現象>

  • 瓦表面の風化
  • 微細なひび割れ
  • 瓦のズレや脱落
  • 桟木や釘の腐食

下地・防水シートの劣化

瓦が健全な状態でも、下地に使われる防水シート(ルーフィング)や野地板が劣化しているケースもあります。結露や小規模な浸水を繰り返すことで、防水性能が徐々に低下し、雨漏りや建物内部の腐食に発展する可能性があります。

<下地劣化の主な原因とリスク>

  • 防水シートの経年劣化
  • 野地板の腐食・破損
  • 室内側への漏水進行
  • 建物構造材の腐朽

異業種施工による不具合

屋根と外壁、天窓など、異なる職種が関与する部分(取り合い部)は、施工時の連携不足や知識不足によって防水処理が不十分になるリスクに注意が必要です。

とくに、新築工事やリフォーム工事のとき屋根と外壁の工事業者が別の場合、取り合い部の処理が甘くなるケースがあります。

<取り合い部における典型的な不具合>

  • 外壁と屋根の接合部からの雨水侵入
  • 天窓周りの防水不良
  • 配管貫通部からの漏水

瓦屋根修理のタイミングと判断基準

瓦屋根の劣化や損傷が確認された場合は、適切なタイミングの修理が必要です。修理のタイミングを誤ると、屋根全体だけでなく建物内部にも深刻な被害が発生するかもしれません。専門家による点検の重要性と依頼者自身で判断できるポイントを紹介していきます。

専門業者による定期点検の重要性

瓦屋根の劣化は、初期の段階は目立たないことが多く、見た目では気づきにくい点が特徴です。しかし、瓦のズレや下地防水層の劣化などは、見えない部分で損傷が進行しているケースがあります。

そのため、少なくとも3年から5年に一度は、屋根工事に精通した専門業者による定期点検を受けましょう。定期点検では、以下の項目が重点的に確認されます。

点検項目 確認ポイント
瓦のズレや割れ 屋根表面にズレた瓦や割れている瓦がないかを確認する
棟瓦や隅瓦の緩み 屋根の棟(頂上部分)や隅部の瓦に浮き・歪みがないかチェックする
漆喰部分の劣化 棟瓦の接合部などに使用されている漆喰が剥がれたり崩れていないかを確認する
防水シートや野地板の劣化状態 瓦の下地にある防水シート(ルーフィング)や野地板の腐食・破損がないかを診断する
雨どい周辺の異常 雨どいに瓦の破片や砂、漆喰のかけらが溜まっていないか、また排水に問題がないかを点検する

定期点検に無料で対応している業者もありますが、一般的には以下の費用がかかります。

点検修了後には、必要に応じて写真付きの報告書や見積書を作成してくれます。

点検の種類 費用の目安 点検内容 所要時間の目安
簡易点検 5,000~
20,000円
屋根全体の外観確認、瓦のズレ・割れの目視点検など 約30分~
1時間
詳細点検 20,000~
50,000円
防水シートの状態確認、雨樋内部の詰まり点検、小屋裏の調査など 約1時間半~
3時間

専門家の診断により、劣化の進行具合を正確に把握し、必要な修理や補強を適切なタイミングで行うことができます。

目視点検で判断できるサイン

依頼者自身が行う簡易点検も、劣化の初期サインを早期に見つけられる可能性があります。ただし、安全のため屋根には絶対に登らず、地上からドローンや棒にカメラをつけるなどで確認しましょう。

目視でチェックすべきポイントは次のとおりです。

  • 瓦の並びに乱れや浮きがないか
  • 瓦が割れたり、破片が地面に落ちていないか
  • 棟瓦が波打って見えないか
  • 屋根表面にコケや藻が繁殖していないか
  • 雨どいの周辺に瓦片や白い粉(漆喰の劣化)が溜まっていないか
  • 天井や壁に雨染みがないか

上記のサインを見つけた場合は、すぐに専門業者へ点検を依頼してください。

瓦屋根の損傷を放置する危険性

瓦屋根の劣化を放置すると、屋根の防水性能が低下し、雨水が建物内部に浸入するリスクが高まります。初期段階は屋根裏の湿気や小さなシミに留まっていても、次第に下地材や構造材にまで浸水が及び、腐朽やカビの発生を引き起こす原因となります。

放置による主なリスクは以下のとおりです。

劣化の進行度 放置によるリスク
初期
  • 屋根下地材(野地板、防水シートなど)の腐食
中期
  • 建物の主要構造材(柱や梁)の劣化
  • 室内への雨漏りと、それに伴う内装材の損傷
  • シロアリ被害の誘発
後期
  • 修理範囲の拡大と費用の増加
  • 耐震性能の劣化
  • カビによる健康被害
  • 倒壊

劣化が軽微なうちに修理を行えば、部分補修で済むこともあります。しかし、放置して被害が広がった場合は、屋根全体の葺き替えが必要になることもあるため、コスト負担が大きく変わってきます。最小の費用で抑えるためにも、早めの対処が必要です。

瓦屋根の具体的な修理方法

瓦屋根の具体的な修理方法について紹介していきます。瓦のズレや割れといった軽微な不具合に対しては、部分的な差し替えや緊結補修によって対応可能です。

一方で、劣化が広範囲に及んでいる場合は、下地を含めた全面な葺き替え工事が必要となることもあります。

瓦屋根の具体的な修理方法の相場費用は以下のとおりです。

修理方法 相場費用
部分補修 部分的な瓦の差し替え(1枚~) 約1万円~5万円
棟瓦の補修・漆喰の塗り直し 約5万円~20万円
カバー工法 軽量屋根材によるカバー工法 約60万円~150万円
全面葺き替え 屋根膳他の葺き替え(既存瓦→新しい瓦) 約80万円~200万円

 

部分的な差し替え・緊結補修

瓦の一部にズレや割れが発生した場合は、部分的な差し替えや緊結補修によって対応できるケースが多くあります。主な内容は次のとおりです。

  • 割れた瓦を新しい瓦に交換する
  • ズレた瓦を正しい位置に戻し、釘やビスで固定し直す
  • 緩んだ棟瓦を再緊結する
  • 劣化した漆喰を補修する

上記の方法は、劣化が局所的で、屋根全体の防水性能が維持されている場合に有効です。

修理範囲が小さいため、工期・費用とも比較的軽微に抑えられる点はメリットといえます。

カバー工法と適用条件

カバー工法は、既存の屋根材を撤去せず、新しい屋根材(軽量な金属屋根など)を重ねて施工する方法です。解体工事が不要なためコストを抑えやすいものの、適用できる条件が厳格に定められています。なお、瓦屋根はカバー工法による施工ができないため、リフォームの方法で施工するのが一般的です。

カバー工法の定義は古い瓦の上に新しい屋根を重ねる工法です。一方、リフォームの方法では古い瓦を全て撤去して軽量な屋根材を被せて修理します。

カバー工法が適用できる主な条件は次のとおりです。

  • 下地に重大な腐食・劣化が見られない
  • 既存屋根材の強度が一定以上確保されている
  • 建物全体の耐荷重性能に余裕がある
  • 施工対象地域の建築基準(耐風・耐震性能)を満たしている

カバー工法を選択する際は、事前に専門業者による現場調査を実施し、適合可否を慎重に判断することが求められます。

全面葺き替えの基準と判断条件

瓦屋根の劣化が広範囲に及んでいる場合や下地に重大な損傷が生じている場合は、部分的な補修では対応できません。そのため、全面的な葺き替えが必要になるケースが多くあります。

全面葺き替えとは既存屋根を撤去し、新しい屋根材を施工する方法です。大規模な修理になり費用も高額になるものの、新築のような屋根に仕上がるため屋根の不具合を根本から解決できます。
葺き替えを検討すべき主な判断基準は、以下のとおりです。症状が複数確認される場合、早期に全面葺き替えを検討しましょう。

  • 瓦の広範(例:平部の半分以上)な破損・ズレ
  • 下地防水シートや野地板の劣化
  • 屋根裏の漏水跡やカビの発生
  • 地震や台風後の屋根のきしみ

瓦屋根修理の施工フローと管理体制

瓦屋根の修理を進める際は、工事の進め方や管理体制について、施主自身がある程度理解しておくと安心です。

ここでは、修理プロセスの流れと各段階で押さえるべきポイントについてみていきましょう。

  1. 現地調査・診断
  2. 診断報告・修理提案
  3. 見積書の提出
  4. 契約締結

診断から契約までの流れ

修理工事は、正確な現状把握からスタートします。基本的な流れは次のとおりです。

  1. 現地調査・診断
  2. 診断報告・修理提案
  3. 見積書の提出
  4. 契約締結

現地調査・診断

業者が屋根全体を目視点検し、瓦のズレや割れ、下地の劣化を確認します。必要に応じて屋根裏も点検することもあります。診断内容が口頭だけでなく、写真や図面付きで説明されるか事前確認しましょう。なお、依頼せずに勝手に屋根に登る業者には注意が必要です。

診断報告・修理提案

劣化箇所やリスク要因を整理し、必要な修理内容を提案してくれます。複数パターンの提案をするケースも珍しくありません。提案内容に「なぜこの修理が必要か」説明を必ず求めましょう。

見積書の提出

修理内容・工事期間・使用材料・費用の内訳を明記した見積書が提出されます。材料名・数量・単価が詳細に記載されているか確認してください。あいまいな総額提示だけの見積りをする屋根工事業者はやめておきましょう。

契約締結

見積内容に納得したうえで正式に契約します。契約書には工事範囲や支払い条件、工期、保証内容などが明記されます。契約書を必ず読み、特に保証期間や対象範囲を事前に確認しましょう。また、口約束せずに全て書面化することが重要です。

施工時の安全管理と品質保証

瓦屋根の修理工事では、高所作業が中心となるため、作業員の安全確保と現場周辺への配慮が不可欠です。施工中の管理体制について、施主側もあらかじめ確認しておくことで、工事をより安心して任せることができます。

施工前に押さえておきたい管理ポイントは以下のとおりです。

  1. 足場設置と安全対策
  2. 天候管理と作業中止判断
  3. 材料搬入・搬出時の安全管理
  4. 近隣への配慮
  5. 使用材料の品質確認

足場設置と安全対策

施工中には落下防止ネットやヘルメット着用などの安全対策を実施します。足場・落下防止ネットの設置の有無や作業員の安全装備を確認しましょう。

天候管理と作業中止判断

雨天・台風接近時には作業を中断し、安全を最優先に対応します。悪天候の日に無理に作業をせずに中断できる体制なのか、現場責任者の判断を確認しましょう。

材料搬入・搬出時の安全管理

材料の出し入れ時に通行人や近隣への配慮ができているかも押さえておきたいポイントです。資材置き場や、搬出時に周囲に危険が及ぶ可能性はないかを確認しましょう。

近隣への配慮

公示前に近隣住民への工事案内や作業中の騒音・粉塵対策を実施します。着工前に近隣説明がされているかを確認しましょう。

使用材料の品質確認

使用する瓦や防水材が規格品・保証品かを事前に確認します。材料納品時に説明を受ける、カタログや規格証明を見せてもらいましょう。

施工後のチェックとアフターフォロー

工事完了後は、仕上がり状況や施工精度を最終確認し、不備がないかを検査します。
施主自身も立ち会い、屋根の状態を目視で確認しておくことが大切です。施工後の主なチェックポイントは以下のとおりです。

  1. 瓦のズレ・割れ・浮き
  2. 棟瓦・隅瓦の固定状態
  3. 雨樋や下地部分の異常
  4. 屋根裏の湿気・漏水跡

瓦のずれ・割れ・浮き

屋根表面にズレたり割れた瓦がないかをチェックしましょう。地上からドローンや棒付きのカメラなどで瓦の並びに乱れがないかを確認します。

棟瓦や隅瓦の固定状態

棟や隅部分の瓦が波打っていたり、浮いていないかをチェックしましょう。棟部の直線性、ゆがみがないかを目視確認します。

雨樋や下地部分の異常

雨樋に破損や傾きがないか、瓦破片などが溜まっていないかをチェックします。雨樋の水の流れやゴミ詰まりを確認しましょう。

屋根裏の湿気・漏水跡

天井裏に湿気や雨染みが出ていないかをチェックしましょう。小屋裏や押し入れ天井などシミ・カビ臭を確認します。

工事完了後には、業者から工事完了報告書と保証書が発行されます。とくに、保証対象と保証期間については、必ずその場で説明を受けておきましょう。

施工後しばらくしてから不具合に気付くケースもあるため、保証期間内の定期点検やアフターフォロー体制が整っているかを契約時に確認しておくことが重要です。

瓦屋根の修理費用相場と費用構成の内訳

瓦屋根の修理費用は、劣化の範囲や施工方法によって大きく異なります。ここでは、部分的な修理から全面改修までの費用相場と、実際の見積りでよく出てくる項目の内訳についてみていきましょう。

部分修理と全面改修の価格帯

瓦屋根の修理は、損傷が限定的な場合の「部分補修」と、劣化が広範囲に及ぶ場合の「カバー工法・全面葺き替え」に大きく分けられます。

以下は一般的な価格帯の目安です。(再掲)

修理の種類 修理内容 費用目安 説明
部分補修 部分的な瓦差し替え(1枚〜) 約1万円〜
5万円
割れ・ズレのある箇所を個別に差し替える簡易な修理
棟瓦の補修・漆喰の塗り直し 約5万円〜
20万円
棟部のゆがみ修正や漆喰の劣化補修
カバー工法 軽量屋根材によるカバー工法 約60万円〜
150万円
瓦撤去後、軽い金属屋根材を重ね張りするリフォーム
全面葺き替え 屋根全体の葺き替え
(既存瓦→新しい瓦)
約80万円〜
200万円
瓦撤去、下地改修、新規瓦施工を含む全面改修

 

工事費の内訳

屋根修理の費用は、一般的に「材料費」「施工費(工賃)」「足場設置費用」の3つで構成されています。内訳を把握しておくことで、見積書の内容を理解しやすくなます。

それぞれの費用項目の内容と目安は以下のとおりです。

項目 内容 費用の目安(参考)
材料費 瓦(交換用)・漆喰・防水シート・ルーフィング材・補強材など、施工に必要な建材一式 使用する材料の種類・グレードにより大きく異なる
施工費
(工賃)
職人による作業費。瓦の撤去・新設、補修、清掃、下地補強などを含む 工事の範囲・難易度・地域によって数万円〜数十万円
足場設置費用 高所作業を安全に行うための仮設足場工事。安全確保と作業効率のために不可欠 約15,000〜20,000円/坪
(※屋根面積で計算)

 

信頼できる瓦工事業者の選び方

瓦屋根の修理や葺き替えは、施工不良が後々の雨漏りや劣化につながりやすいため、業者選びが重要です。ここでは、専門資格や実績、見積もり内容など、信頼できる業者を選定する際に施主が確認すべきポイントについてみていきましょう

瓦工事に関する資格の有無

屋根工事の技術や知識には個人差があるものの、一定の水準を満たすかどうかの目安として、資格の有無を確認することが重要です。たとえば、瓦屋根に関する代表的な資格は次のとおりです。

資格名 概要 チェックポイント
瓦屋根診断技士 一般社団法人全日本瓦工事業連盟が認定。瓦屋根の劣化や構造の診断に関する知識と技術を備える。 屋根点検や修理提案の内容が理論に基づいているかを見極める指標になる。
かわらぶき技能士
(国家資格)
厚生労働省による技能検定制度の一種。瓦施工の熟練度を測る。1級・2級に分かれ、実務経験と試験が必要。 実際の施工技術が一定以上の基準に達している証拠として信頼できる。

各地域の瓦工事業協会への加入の有無や社内での技術研修体制の有無もあわせて、確認しておきましょう。

施工実績と対応力のチェックポイント

業者の信頼性を判断するためには、過去の実績や対応の姿勢も重要です。以下のような点に注目しましょう。

  • 修理・葺き替えなど、これまでに行った工事の内容や件数を提示できるか
  • 実際の施工事例を写真や資料で説明できるか
  • 使用する瓦の種類に応じた施工経験があるか(粘土瓦、セメント瓦、金属瓦など)
  • 点検・見積もり時の説明が丁寧で、専門用語を避けて説明してくれるか
  • 問い合わせ時や工事後の対応が迅速かつ誠実か

上記の項目は、短時間の面談や問い合わせ対応の中でもある程度読み取れる部分です。問い合わせや質問に対し、的確で具体的な説明ができるかどうかは、信頼できる業者を見極めるひとつの指標になります。

見積比較と不当表示への注意点

屋根修理を依頼する際は、複数の業者から見積もりを取得し、費用と内容の両面から比較検討することが重要です。単純な金額の安さだけで判断すると、施工の品質やアフターサービスの面で差が生じるケースがあります。

見積書を受け取った際は、次のような点を基準に内容の信頼性と業者の説明姿勢を確認しておきましょう。

確認項目 内容 注意点・施主がとるべき対応
見積書の明確さ 工事項目が「一式」表記のみになっていないか 作業内容が不明な場合は、何を含むのか具体的に説明を求める
材料の記載 瓦の種類、漆喰、防水シートなどの製品名や数量が記載されているか 品名・数量・面積などが明記されていない場合は再確認する
工事内容の具体性 撤去作業、下地補修、清掃、処分費などの記載があるか 項目が細分化されていない場合は内訳の提示を求める
保証・アフターサービス 保証期間、保証範囲、アフター点検の有無が明記されているか 保証内容が不明確な場合は、文書での説明を依頼する
広告・営業表現の根拠 「行政認定業者」「地域No.1」などの表現に根拠があるか 資格団体名、認定制度、受賞歴の出典が明記されているかを確認する

見積書の内容を確認する際は、価格だけでなく、工事項目の具体性や使用材料の明記、保証の有無なども含めて判断することが大切です。また、広告や営業資料に記載されている認定・受賞歴については、根拠となる資格名や団体名が示されているかを確認しましょう。

瓦屋根を長持ちさせるために必要な点検と維持管理の方法

屋根は日常的に見えにくい場所にあるため、劣化や不具合が起きても気づかないまま時間が経過することが少なくありません。しかし、定期的な点検と適切な維持管理を行うことで、雨漏りなどの重大なトラブルを防げます。

ここでは、屋根を長く安全に保つための基本的な考え方と実践方法を紹介します。

定期点検の時期と方法

屋根の点検は、外から見える範囲を年に1回程度、目視で確認しましょう。加えて、3年~5年に一度は、専門業者による詳細な点検の実施が適切とされています。

大雨や台風、地震など自然災害の後も早めの確認が重要です。

点検箇所 主な確認内容

(劣化のサイン)

放置した場合のリスク
瓦の表面 割れ・ズレ・欠損がないか
(瓦がずれて重なりが乱れている、破片が落ちている)
雨水の侵入による雨漏り、下地劣化の進行
棟瓦・隅瓦 ゆがみやぐらつき、漆喰の剥がれがないか
(棟のラインが曲がって見える、漆喰のかけらが地面に落ちている)
強風や地震による瓦の脱落、構造部への影響
ルーフィング
野地板
屋根裏からの点検で湿気や染みがないか
(屋根裏に黒ずみ、カビ臭、天井のシミがないか)
下地材の腐朽や構造材への浸水被害
雨樋まわり 割れ・詰まり・水の流れの異常がないか
(水があふれている、樋から草や泥が見える)
外壁の汚れ・劣化、基礎部分への水の集中

 

メンテナンスの費用対効果

屋根の劣化を放置した場合、内部に雨水が入り込み、下地や建物全体に影響が及ぶ可能性があります。軽微な劣化の段階で修理を行えば、工事規模や費用を最小限に抑えることが可能です。

かし、劣化を放置すれば症状が進行し、大規模な改修工事が必要となる可能性が高まります。症状の進行に応じた修理内容と想定費用の例は、以下のとおりです。

劣化の進行段階 主な症状と必要な対応 おおよその費用目安
初期
(軽微な劣化)
瓦の一部がズレる・割れる場合、瓦の差し替え・補修が必要 約1万円〜20万円
中期
(部分的な下地劣化)
屋根裏に湿気、漆喰の剥がれがある場合、棟部補修、防水シートの一部交換が必要 約60万円〜150万円
進行
(全体的な劣化)
雨漏り、野地板の腐食がある場合、屋根全体の葺き替えが必要 約80万円〜200万円以上

 

ライフサイクルコストと修繕計画の立て方

屋根の寿命を長く保つには、ライフサイクルコスト(建築後から解体までにかかる総費用)を意識した修繕計画が重要です。「壊れてから直す」のではなく、「劣化する前に手を入れる」という考え方のほうが長期的な視点に立てば経済的です。

以下のようなに、定期点検と修繕のサイクルを念頭に置くことが重用です

  • 10年ごとに下地防水層の状態を専門業者が点検
  • 必要に応じてルーフィングや野地板の部分交換を実施
  • 30〜40年を目安に瓦の再選定または全面改修を検討

計画的に対応することで、大がかりな工事や突発的な費用負担を避け、住まいの安全性を保つことができます。

 

まとめ

瓦屋根は高い耐久性とデザイン性を備えた優れた屋根材です。しかし、長期間安心して使い続けるためには、定期的な点検と適切な修理が欠かせません。とくに、日本の気候は、台風や地震などの自然災害も多いため、外見上の変化がなくても、内部で劣化が進行しているケースがあります。

日頃の目視点検に加えて、3年~5年に一度は専門業者による詳細な点検が大切です。劣化の早期発見と部分補修を心がけることで、大規模な修繕や高額な出費を未然に防ぐことができます。

修理の際は施工内容や見積もりの内訳を十分に確認し、資格や実績を持つ信頼できる業者を選ぶことが重要です。

  • この記事を書いた人

屋根お助け本舗編集部

屋根お助け本舗編集部は、
屋根修理の情報を発信する専門チームです。

「屋根を迅速に修理し快適な暮らしを提供したい」

現場で得た知識や経験を活かし、
専門家から寄せられた意見も参考にしながら、
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